raba777のサッカー分析blog

論理的思考でサッカーを分析します。主に日本代表、海外サッカー、Jリーグのマッチレポートを行います。

2014 W杯 日本 対 ギリシャ の分析

皆さんこんにちは。

 

日本時間6/20午前7:00キックオフだったギリシャ戦。惜しくもドローとなりました。

恐らく決定機が少なくイライラされた方もいらっしゃると思います。怒りを蒸し返す内容かもしれませんがよろしければごゆっくりどうぞ。

試合の流れ

1戦目のレシフェに近いナタール。気候は気温29℃湿度65%とコートジボワール戦とほぼ同じ。先発は一戦目から香川と森重に変わって大久保と今野。相手はこの前決定機外したゲカスからミトログルへ。

試合の流れを簡単に書くと、日本は入りから前からプレッシングをしかけポゼッションを高め完全に主導権を握ります。しかし日本特有の連動した攻撃はあまり見られません。すると37分アンカーのカツラニスが一発退場。日本はボール支配、ギリシャはカウンターとセットプレーでチャンスを作るようになります。後半途中からはギリシャの体力がなくなりカウンターがなくなります。惜しいシーンを何個か作りますが決めきれない日本。守るギリシャ。そしてスコアレスのまま試合終了。

なぜあれだけの攻撃力があった日本が10人相手に1点も決められなかったのか。決定力不足と言って終わりにする方もいますが、そうなると今まで決定力がないままゴールを決めてきたわけで。何が原因だったのか、試合を追いながら論理的に分析していきます。

日本とギリシャの攻撃の狙いははっきり

日本の守備は特に言うこともなく、前からプレッシングに行き相手にボールを簡単に持たせない連動した守備をしていました。コートジボワールでの宿題は1つ消化したわけですね。

ギリシャの守備と日本の攻撃ですが、ギリシャは守備時4-1-4のフォーメーションになり、日本はそのギャップをついていました。キャプチャで説明すると

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3つも貼るとわかりやすいですが相手のアンカーの横にスペースが出来ててそこで大迫が受け放題だったのです。日本はここへの縦パス、左サイドの連携(長友、岡崎、本田)、岡崎の裏抜けでギリシャを攻略していました。

ギリシャの方はというと、繋ぐことはせずセットプレー、カウンター、そして個人技での突破からゴールを狙っていました。それ以外だとサマラスへのロングボールが試合通じて多かったです。

ここまではザックを含め狙い通りの展開でした。が、実際はこのギリシャのガバガバDFのうちに点を取れなかったことが大きかったのです。

試合に慎重に入りすぎたザック

なぜ取れなかったか。まず遠藤の不在。勝たなきゃいけない試合で縦パスも長谷部山口とは違うものをもつ遠藤を使わなかったこと。
そして香川の不在。アンカーのカツラニスは要注意人物本田をかなり見ています。一番上のキャプチャがわかりやすいです。

なので大迫はアンカー気にせずボールを受け放題なのですが、もちろんギリシャも最終ラインが大迫についていくので前は簡単には向けません。
そうなるとワンタッチではたくのがセオリーですが本田にはアンカーがついているし、本田はこの試合低めの位置取りをしていました。となると岡崎か大久保だけども、岡崎はいつもどおりDFラインと駆け引きをしていて遠いことが多い。そして頼みの大久保も遠い。ただ大迫が1人で前を向くとチャンスになっていてそれは20:30の一番惜しかったミドルです。

このようにバイタルにスペースがあってかつコンビネーションが得意な選手はもちろん香川です。コスタリカ戦2点目などは縦パスの落としを受けた香川がコンビネーションで崩す典型です。もちろん香川が縦パスを貰うことも出来ました。

もちろんザックの意図も読めます。遠藤は守備の穴だとか、香川は守備の穴、コートジボワール戦みたいに押し込められるかも…などなど。加えてザックの試合の流れとしては恐らく前半の布陣でポゼッションを上げてかつ相手を押し込めて疲れさせて後半勝負だったのではないかと思いますが、まぁそうだとしたら慎重に入りすぎたゲームでした。

ギリシャにとっても日本にとってもまったく予想外なレッドカード

その後32:45には長友クロスに大久保飛び込んだり34:50には本田に絶好のチャンスが訪れますが生かせず。

そして37分。長谷部への悪質なアフターでカツラニスが2枚目のイエローで退場します。日本が主導権を握っており、一見すると勝利は確実に見えますが、残念ながらそれは幻想でした。39分などに鋭いカウンターを受けますがこれを凌いだあと、41分FWに変えてMFカラグーニスを投入し、ボランチを2ボランチのような形にしてきます。アンカー1人だったからスペースあったけどそこが2人になったらどうなるのか。もちろんスペースはなくなります。

後半、苦しいギリシャに内田が襲い掛かる

ザックは遠藤、香川を後半から次々投入しますが日本の大好物の中央のスペースはなくなっています。未だにここで謎なのはなぜ岡崎を右にしてワントップ大久保もしくは大迫にしなかったのか。

ちなみにこの日先発した大久保。守備からの組み立ての時はライン際にいることも多かったのですが基本的に香川並に中や左サイドに出張していました。それに伴いサイドバックのホレバスも中に絞っていたので右サイドは前半からスペースだらけでした。中央が封鎖された日本は右サイド、つまり内田からかなりのチャンスを作ることになります。内田のマッチアップのサマラスも守備は緩かったので。

22:30には左で作って香川が内田に絶妙パス&内田の絶妙クロス

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↑内田はフリーパスで加速して青の部分に走っています

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大久保決められず。大久保の姿に8年前の柳沢選手を重ねた人も少なくはないと思います。

そして24:30、ギリシャの足が完全に止まります。もうこれでほとんどカウンターに怖さはなくなりました。これはポゼッションの賜物です。

日本の戦術の方向性はどこへ

今まで日本のサイド攻撃は左サイドで作って右、もしくは中央で決める形を主軸としてきました。左で作りFWと本田、そして岡崎の3人がペナルティエリアに入り込む形です。

この試合、既に中央は封鎖。いつもどおり遠藤、香川がいる左サイドで組み立てが多くなり、左に人が多くなります。

ということはもちろん右サイドは開いているわけでありますが…前述通り大久保は右サイドにいないのです。

25:40からの2つ目の決定機。

f:id:raba777:20140620234101j:plain黄色が岡崎で…大久保が青です。なんで大久保ペナルティエリアにいないんだ。別にパス回しに参加してた訳ではありません。できるだけ肯定的に見て流動的にポジションチェンジをしているのだろうと推測しますが、まったくボールがこぼれてもこなさそうにいる大久保。ザッケローニはどのような戦術を思い描いていたのかはわからないですが、機能はしていませんでした。

加えてですが背が高い相手にファーへのクロスが多すぎました。ニアで潰れる選手は誰だったのか。流動的に動きすぎて役割的なところで方向性が見えませんでした。

そして32:25にはギリシャは団子状態になります。もう中央はギリシャ選手だらけ。
こうなってしまうとそう簡単には点をとれません。

最後の決定機といえるのは45:45からのカウンター。これも決まらない。

最後は吉田を前にあげますがいい形にはならず、試合終了。

決めきれなかった日本の原因

なぜスコアレスドローに持ち込まれたか。

まず前半の退場者が出るまでで決められなかったことが最大の原因です。ギリシャ対コロンビアで失点して前にきたら追加点とれるということもわかっていながら、とても勿体無い。
そして終盤の攻勢で戦術に方向性が見えなかったこと。ギリシャの体力は限界まで奪いながらも…。最後のところでのアイデアや精度も欠けていました。

ただここまで引かれるとどんな強豪でも苦戦します。それは間違いないのでどちらかというとギリシャの選手を褒めるべきだとは思います。日本が0点に抑えられたのはコンディションが酷すぎた欧州遠征のベラルーシ戦以来ですし。

加えてですがこのようにうまく崩せない時に重要なのは基本的にセットプレーといわれますが、セットプレーでいい形にあまりならないのも今回の日本の特徴です。特にこの試合は良い位置でFKを貰うことが多く、もったいなかったです。

4年前はジャブラニ使いといわれた遠藤と本田も、この公式球ブラズーカは苦手としているのかもしれません。

最終戦は気楽に

今から考えると初戦に引き分けておけば…という感じは正直するのですが…まぁ今から考えてもしょうがないです。決勝トーナメントへの期待はほんのちょっぴり残しつつ、コロンビア戦はギリシャ戦で出来た前プレから主導権を握ることをコロンビア戦でもすること、そしてギリシャ戦で足りなかったゴール前のアイデアを出すことをして欲しいです。点がいっぱい入るの期待です。

そろそろ次からは他の代表の分析もやってきますー。ではー。